「いつか行ってみたい世界遺産、知床。でも、どうやって行くの?」「どんな服を用意すればいい?」「ヒグマが怖いって聞くけど、対策は?」
手つかずの雄大な自然が広がる知床への旅は、誰もが一度は憧れるもの。しかし、その圧倒的な自然ゆえに、アクセス方法や服装、安全対策など、準備に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、知床への旅行を計画しているすべての方へ向けて、知床観光の拠点となるウトロ地区へのアクセス方法、季節や天候に合わせた服装と持ち物、そして最も重要なヒグマとの遭遇を避けるためのルールまで、知床を安全に満喫するための情報を網羅的に解説します。
この記事を読めば、知床旅行の準備は万全です。しっかり準備をして、一生忘れられない感動の旅へ出かけましょう。

世界自然遺産・知床の魅力とは?

2005年に世界自然遺産に登録された知床。その最大の魅力は、「流氷が育む豊かな生態系」と「火山活動によって生まれた雄大な景観」にあります。
冬に流れ着く流氷は、植物プランクトンを大量に発生させ、それを食べる動物プランクトン、魚、そしてアザラシやクジラといった大型の哺乳類まで、豊かな海の生態系を育みます。その恩恵は陸にも及び、ヒグマやエゾシカ、キタキツネ、オオワシなど多種多様な野生動物が暮らす、まさに生命の楽園です。
春から夏にかけては、雪解けとともに知床連山が緑に染まり、高山植物が咲き誇ります。断崖絶壁が続く海岸線は、クルーズ船から眺めることでその迫力を実感でき、多くの海鳥が子育てをする様子も見られます。
このように、海と陸の自然が密接に結びつき、ダイナミックな景観と生命の営みが共存している場所、それが知床なのです。
知床観光の拠点・ウトロへのアクセス方法【空港・JR別】

知床観光の拠点となる「ウトロ地区」。ここへのアクセスは、主に飛行機と公共交通機関、またはレンタカーを利用します。ご自身の旅のスタイルに合わせて最適な方法を選びましょう。
1. 女満別空港からウトロへ
知床に最も近い空港は女満別(めまんべつ)空港です。
- 路線バス(知床エアポートライナー)
- 運行会社:斜里バス、網走バス
- メリット:乗り換えなしでウトロまで直行できるため、運転の負担がなく最も手軽な方法です。車窓からの景色も楽しめます。
- レンタカー
- メリット:空港で借りれば、知床までの道中も自由に立ち寄りができます。知床半島は広大なので、現地での移動の自由度が高まります。
2. JRを利用してウトロへ
鉄道を利用する場合、最寄り駅はJR知床斜里駅です。
- 路線バス
- JR知床斜里駅前から、ウトロ温泉バスターミナル行きの路線バス(斜里バス)が運行しています。
- レンタカー
- 知床斜里駅周辺にもレンタカー会社があります。列車での旅情を楽しみつつ、現地では車でアクティブに動きたい方におすすめです。
3. 釧路空港からウトロへ
釧路空港を利用するルートもあります。距離はありますが、道東の他の観光地と組み合わせて周遊するプランに適しています。
- 釧路空港からJR釧路駅へ移動し、JR釧網本線で知床斜里駅へ。そこからバスに乗り換えるのが一般的です。
アクセス方法 | メリット | デメリット |
バス | 運転不要、乗り換えが少ない(空港から) | 時間の制約がある、本数が少ない |
レンタカー | 行動の自由度が高い、荷物が多くても楽 | 運転の負担、冬季は雪道運転の技術が必要 |
<ポイント>
知床での滞在を最大限に楽しむなら、レンタカーの利用が最もおすすめです。ただし、冬の運転に慣れていない場合は、公共交通機関を利用するのが安心です。
知床旅行の服装と持ち物リスト|天候急変に備えるのが鍵
知床の自然を快適に楽しむためには、服装の準備が非常に重要です。知床は天候が変わりやすく、夏でも朝晩は冷え込むことがあります。「重ね着」を基本に、機能性の高い服装を準備しましょう。
基本の服装:重ね着(レイヤリング)
- ベースレイヤー(肌着): 汗を素早く乾かす化学繊維のものがおすすめ。
- ミドルレイヤー(中間着): 保温性を担うフリースや薄手のダウン。
- アウターレイヤー(上着): 風や雨を防ぐ防水透湿性素材のジャケット(ゴアテックスなど)。
持ち物チェックリスト
- 歩きやすい靴: 防水性のあるトレッキングシューズやウォーキングシューズが必須。
- 雨具: 上下セパレートタイプのレインウェアが両手も使えて便利。折りたたみ傘もあれば役立ちます。
- 帽子: 日差しや雨を防ぐため。風で飛ばされないよう、あご紐付きがおすすめです。
- リュックサック: 散策中に両手が空くように、荷物はリュックにまとめましょう。
- 飲み物: 自然散策中はすぐに水分補給ができるように持参しましょう。
- 双眼鏡: 野生動物や遠くの景色を観察するのに便利です。
- 虫除けスプレー: 夏場はブヨなどが多いので必須です。
- 日焼け止め: 夏は日差しが強いので忘れずに。
- クマ鈴: ヒグマに人の存在を知らせるために携帯しましょう。
<アクティビティ別の注意点>
- カムイワッカ湯の滝: 沢登りになるため、滑りにくいウォーターシューズやサンダル、着替えが必須です。(要予約)
- 流氷ウォーク(冬): 専用のドライスーツをレンタルします。スーツの下は動きやすい服装で。
【最重要】知床の掟|ヒグマとの共存ルール

知床は日本で最もヒグマの生息密度が高い地域の一つです。ヒグマと不幸な事故を起こさないため、そして知床の自然を守るため、以下のルールを必ず守ってください。
知床財団が掲げる「知床3つの約束」
- STOP! えさやり
絶対に野生動物に食べ物を与えないでください。人が食べ物の味を覚えさせると、人里に下りてくる原因となり、最終的にはヒグマを駆除せざるを得ない状況につながります。食べ物やゴミは必ず持ち帰りましょう。 - 近すぎませんか?
野生動物を見つけても、決して近づいてはいけません。特にヒグマに対して接近する行為は法律で禁止されています。十分な距離を保ち、静かにその場を離れましょう。車の窓から顔や手を出すのも危険です。 - 畑に入らない
農作地には立ち入らないでください。靴の裏に付着した病原菌が畑に持ち込まれ、農作物に深刻な被害を与える可能性があります。
ヒグマに出会わないために
- 音を出す: クマ鈴やラジオなどで音を出し、人の存在をヒグマに知らせましょう。
- 単独行動を避ける: できるだけ複数人で行動しましょう。
- 早朝・夕方の行動に注意: ヒグマが活発になる時間帯の行動は特に注意が必要です。
- 最新情報をチェック: 知床自然センターなどでヒグマの出没情報を確認してから行動しましょう。
<もしヒグマに出会ってしまったら>
- 騒がない: 大声を出したり、走って逃げたりしないでください。ヒグマを興奮させます。
- 静かに後ずさりする: ヒグマから目を離さず、ゆっくりと距離をとりましょう。
まとめ:万全の準備で、最高の知床体験を

世界自然遺産・知床は、私たちに圧倒的な感動を与えてくれる特別な場所です。その素晴らしい自然を未来に引き継ぎ、誰もが安全に楽しむためには、旅行者一人ひとりの理解と協力が不可欠です。
今回ご紹介したアクセス方法、服装、そしてヒグマ対策を参考に万全の準備を整え、自然への敬意を忘れずに、知床の旅を心ゆくまで満喫してください。きっと、あなたの人生に残る最高の体験が待っているはずです。